今から10年前、上司から姫路市のマーケット調査をしてきなさいと言われたのが姫路プロジェクトの始まりでした。地元の同業者に話を聞こうと思いましたが知り合いがいません。仕方なく、「みゆき通り商店街」の呉服屋さんに飛び込んで、老舗の不動産業者を教えてもらいました。その同業者の方がうちの社員をご存知で、つながった!と安堵したのを覚えています。
初めてマンションを供給するとなると、まずその街を知る必要がありますからなかなか大変ですよね。私の会社では『あるべき場所にあるべきスタイルで。唯一無二の建築物を創造』という考えで設計しています。現地を訪れて、その街の色や温度を感じていると、その街が“こんな建物を建ててほしい”と伝えてくるんです。そこからイメージを広げて設計していく。まずは街ありき、ですね。
弊社では『共生(ともいき)』を企業理念としていまして、自分の生き方が他の人の幸せにつながる、そういう企業でありたいと願っています。ですから、まず街とそこに暮らす人を知ることが事業の第一歩ですね。神崎組さんは姫路の地元企業ですから、この街をよくご存知ですね。
和田興産さんは確か今年で創業125年ですよね。弊社もおかげさまで創業105年を迎えました。この姫路市を中心に歩んで来られたのは『上下和衷協力』という創業者の言葉があったからだと思います。上下の垣根を越えて互いに協力を惜しまず心をひとつにして職務を遂行する、そうすれば結果は自ずとついてくるという考えです。この行動規範があればこそ、姫路城の昭和・平成の大修理にも貢献できたのだと思います。
神崎組さんは、今までおつきあいした施工会社さんの中でも最も歴史ある会社です。「姫路城」という歴史的建造物だけではなく、駅前再開発の「ピオレ姫路」「アクリエひめじ」や「中央卸売市場」をはじめ公共的な施設の施工も多いですね。
これまで別々にご協力いただいた物件は他にもありますが、この3社でのコラボレーションは姫路エリアで3物件。驚いたのは、神崎組さんの施工なら買う、とおっしゃるお客様がいらっしゃったことです。神崎組さんは姫路ブランドなんですね。ゼネコンさんの名前で買うと聞いたのは初めてでした。すごい信頼感です。
うちの施工だから買う!? もう本当にうれしいですね。ありがたいです。姫路は城下町ということで、ひとつの街としての地域としての団結力が強いんです。和田興産さんがこの街で最初に苦労されたことは想像できます。歴史ある姫路城が中心となってこの街が成立していて、伝統を守るという意識が常にあるから、新しいモノや人を受け入れるのが慎重なのかもしれません。
地元説明会などでその街の方々のお話をお聞きすると姫路愛が伝わってきます。ですから事業主としては大きな責任を感じます。街の価値が上がるような建物にしないと地元の方々に対して失礼ですし。実際、素敵な建物ですねと言っていただいた時は努力が報われたと思いました。
姫路と言えば姫路城が象徴する歴史伝統を思い浮かべますが、もちろんそれだけではありません。駅前再開発によって生まれた新しい景色が進化を加速しているように思います。街を歩いてみると西洋文化を取り入れた建築物も残っていますし。以前「ワコーレ姫路オーナーズレジデンス」では近隣にある旧逓信省の建物、「姫路モノリス」をオマージュしてデザインしましたが、街並みと美しく馴染みました。
再開発によって駅周辺がモダンになり、お城の周辺は古いものが残されています。Old & Newが二極化されて上手に整えられたと思います。洗練された「ワコーレ」ブランドの登場が姫路の活性化につながっていると感じます。素敵なマンションには素敵な人々が集いますから。
地元の神崎組さんにそう言っていただけると、ほっと胸を撫で下ろしたくなります。この10年間で、姫路の街の特徴を学び、プロジェクトの商品づくりに反映していってます。本当に勉強になりました。そしていま、この街を見ると新陳代謝がとても早いです。少し目を離すと新しい変化が現れていますね。
たとえば神戸の中心部などには手つかずの古い建物が点在していて、街ぐるみの開発が進んでいないような印象を受けます。整った敷地を確保するのも難しいですし。でもここ姫路では、街全体で美しく開発が進んでいるように思います。速いスピードで進化しながらも、強い姫路愛があるのできちんと歴史伝統が守られている。その融合する感じが姫路ならではですね。
姫路に「ワコーレ」をお届けして10周年。この節目に、いよいよ最新作をお届けすることとなりました。(※1)途切れなくレジデンスをお届けしてきたことで、姫路の皆様に認めていただけるようになり、10周年・12棟目という実績を築くことができました。決して独りよがりにならないこと、その場所に合うコンセプトやデザイン、街に建物を残す責任を強く意識しながら事業を行ってきたことが報われたように思います。弊社のプロダクトコンセプト「プレミアム・ユニーク」、価値ある創造。この指針を大切に考えて最新作を創造します。
うちの本社は北条口にありまして、2016年にお手伝いさせていただいた「ワコーレ姫路北条口」が私の机から見えるんです。姫路城をイメージさせる石積みをエントランスホール内に作らせていただいたことを思い出します。今回の最新作は北条口エリアの4棟目で、そういう歴史伝統からの発想ではなく少し未来的な印象です。すぐ近くの駅前再開発エリアと呼応するデザインですね。
現地は拡幅される都市計画道路(内環状東線)と十二所前線が交差する角地で、姫路の新しいシンボルとなる建物です。駅前の再開発エリアにも近く、生まれ変わていく姫路の未来へのゲートとしてデザインを考えました。フォルムの壁面に金属ルーバーを採用して大きなゲートをあしらい、デジタル的な横ラインをアクセントとして、モノトーンでありながら明るく上品な佇まいを描きました。
文教の香り高い城巽地区、歴史的な北条口門の近く。こうしたエリアの中で、未来へと姫路を牽引するレジデンスを創造したい。それがコンセプトです。この最新作はこれまでの「ワコーレ」の中で最も駅前再開発エリアに近い物件で、変化し進化する姫路の未来をテーマとしました。
姫路市は驚くほど進化しました。以前の駅前のイメージからは想像できないほど変わりましたね。現地から徒歩で行ける「アクリエひめじ」のような大きなホールもなかったですし。私も歌舞伎やコンサートを散歩がてら楽しんでいます。そして、「兵庫県立はりま姫路総合医療センター」をはじめ、大規模な医療施設が徒歩で利用できるのもすばらしいですね。市内に暮らす人々はもう未来の生活を手に入れたかのようですね。
これまでの姫路は歴史文化のイメージが前面に出ていたと思いますが、これからの姫路はそういう歴史的財産と共に、もっと多様性を押し出していけばさらに魅力的な街に進化するのではと思います。新しい顔を次々に見せてくれるこの街のグレードアップにこの最新作が貢献できれば、こんなにうれしいことはありません。
受け入れていただいた皆様へのお礼とともに、ここまで来られたのも協力会社様のご尽力へも感謝の気持ちでいっぱいです。姫路で10周年を迎えられた今、さらにこれからの10年を見据えて、新たなチャレンジへと邁進していきたいと思います。本日はありがとうございました。